Vanstar スケッチストーリー版 その1

空飛ぶ男が窓の女に呼び止められた。

 

何してるんですか?

 

こういう機械のクズを集めてます。

 

ふうん。どこから来たんですか?

 

上から来ました。

 

後ろのアレに乗って来ました。

 

アレね。

 

破片をばら撒いて、落ちて来ましたね。

 

あの破片を集めてるんですねね。大事なんですね。

 

いえ、ゴミです。仕事中ですので、これで…。

 

男はアレに向かって帰っていった。

 

女はそれを見届けた。

女はアレについて考察していた。

 

1、アレは空から落ちて来て、破片をばら撒いた。

 

2、アレは窓から見える丘に突き刺さった。

 

3、大きさがよくわからない。

 

4、霊能者が騒ぎ立てた。

 

アレ?おーい!

 

はい、何でしょう。

 

アレは宇宙船ですか?

 

はい、そうです。

 

5、宇宙船である。

 

はい?はい。

 

何人くらい乗れるんですか?

 

500人から1000人です。

 

6、けっこうでかい。

 

はあ。はい。仕事中ですので、これで…。

 

アレについてのまとめ。500人から1000人乗りの宇宙船で、破片をばら撒きながら空から落ちて来て、丘に突き刺さった。霊能者が騒ぎ立てた。乗っていた人は破片を集めている。

わたしは見た。

 

光の翼で飛ぶ天使の姿を。

 

そう言って霊能者は、信者になくて自分にある部分と、その話を結びつけて、信者よりも自分を大きく見せて、信者の自信を奪った。

 

それは宇宙船から落ちた私の仲間のことですね。

 

えっ。

 

体の近くから光の風を吹き出して、飛んで、助かる仕組みです。

 

へえ。体から出るんですか?

 

いえ、船から光の風を送るんです。その吹き出し口を、体の近くに開くんです。

 

どういう原理かは知らないけど、つまり船がないと飛べませんね。

 

そうです。察しが良いですね。

 

あなたも飛べるんですか?

 

はい。しかし、特別なとき、許可されたときだけです。

 

許可制なんですね。

 

わたしはさらに見た。

 

天使が手から物を出す奇跡を。

 

あとは信者の弱気に当てはまるような理屈をつけて、目に見えない高額商品を売りつけて、おしまい。

 

それは万が一のために武装した、偵察部隊です。

 

武装?手から武器を出せるんですか?

 

光の風と同じことですよ。手の先に、部品や材料を送ります。

 

それが刃物や銃器になります。

 

その部品を回収してるんですか?

 

いえ、これは機械のクズで、ゴミですよ。

 

ふーん。そっか。

 

ニュースで聞いたとおりですね。

 

しかし女はニュースに嘘が多いことを知っていた。

彼等は霊能者とは何の関係も無かった。

 

それがわかるころ、すでに霊能者は新しい題材で商売していた。

 

女はその光景を思い出していた。

 

こんにちは。

 

そっちから来るなんて、何か用ですか?

 

じつはこの星、私達の神話に出てくる星なんです。

 

そっか。

 

神話と霊能者を同じにされたくなくて、それを伝えに来ました。

 

彼等は私達の社会とすら同じではないですよ。

 

神話の外へ逃げて、自信を失い、違う神話を探す人たち。

 

神話の外?

 

あなたも私も、みんなも、神話を生かされてますでしょ。感謝いたします。

 

何故その霊能者は、そこまでして人々の自信を奪うのでしょうか。

 

話を整理すれば、逃げるとなにも生めなくて、命を奪うしかないからだとわかりますよ。

 

本人もそう言ってたから間違いないですよ。

 

よくそんな話を聞けましたね。

 

それ、私も乗っていいですか?

 

はい、ご希望でしたら申請します。

 

聞いてみるもんですね。

 

女ははじめて窓から外出した。

ほんとは宇宙船にも行きたいです。

 

ご希望でしたら申請しますよ。

 

いいの?さすがにダメかと思いました。

 

見学は歓迎なのですが、誰からも申請が無いんです。

 

宣伝不足ですね。

 

男は女を宇宙船に連れて行った。

 

船の中はプラネタリウムに改装されていた。

 

あれが私達の星です。

 

とても美しいけど、なんだか儚いですね。

 

環境が激変して、住めなくなったんです。

 

女はしばらく無言で眺め続けた。

 

家まで送ります。

 

ありがとうございました。

 

こちらこそ。

窓の女は、仕事から帰宅して、一息ついていた。

 

おーい、こんにちは、呼び止めてごめんなさい。

 

いえ、私も仕事が終わったところです。

 

出勤途中の林であなたの仲間に出会いましたよ。

 

たぶん、その区域の担当者ですね。

 

挨拶したら、あなたのように、右手にゴミを持ったまま、左手で空を指差していましたよ。

 

でもそのあと無言だったから、別れの挨拶をして、通り過ぎました。

 

ふだん私たちはテレパシーで話しますから、無言だったのだと思います。

 

窓の女は無言になった。

 

ランチのスパゲティがよほど美味しかったんですね。

 

もしかして思ったことが通じたの?でも惜しい、スパゲッティーニでした。太さが違います。

 

この星のテレパシーは難しいです。

 

ランチがまだなので、これで…。

 

わざわざ遠回りして通るのは、気持ちが良いからですよ。

 

林のことですね。ランチの後で歩いてみます。

 

女は男を見送った。林のこともテレパシーで伝わったかどうかは、満腹の眠気で、どうでもよく思えた。

窓の女は、林で会った女性を思い出していた。

 

彼女は、あの男みたいに、お話できないのだろうか。

 

呼びましたか?

 

林の彼女、あなたみたいに話せないんですか?

 

おそらく話せません、0.5言語から抜け出せない者だと思います。

 

0.5言語?

 

0.5言語は、この星に来て、テレパシーではない言葉に触れたことで、私たちに起きた問題です。

 

どんな問題なんですか?

 

例をお見せします。

 

赤。

 

赤、色の赤?

 

テレパシーでは靴下を伝えました。組み合わせる赤い靴下です。

 

組み合わせると赤い靴下?でも言葉は赤、テレパシーは靴下、どっちも中途半端でわからないです。

 

そうです、だから0.5。言葉もテレパシーも中途半端、組み合わせ方も人それぞれ違う、会話がしづらくなります。これが0.5言語です。

 

若い頃は私も似たようなものでした。相手に甘えて主語を考えなくなるんです。じつはね、今もたまにありますよ。

 

たしかに、若い仲間に多いです。練習すれば克服できます。

 

それまではジェスチャーを使わせています。

 

窓の女は、あれが「上から来た」のジェスチャーだと気がついた。

窓の女は0.5言語の克服方法を考えていた。

 

こんにちは、お話しがあります。よろしいでしょうか。

 

いつでもどうぞ。

 

0.5言語の克服にご協力をお願いしたいのです。

 

ちょうどそのことを考えていましたよ。伝わったのかな。

 

この冠を頭につけてください。新しく作った、カモシダサーという機械です。

 

つけたよ。ほとんど透明で見えないけど、草の香りがしますね。

 

男は無言になった。

 

わたしにもテレパシーが聞こえるよ。これはすごいですね。

 

二人はしばらく無言でテレパシーによる日常会話を行った。

 

慣れてきた。しかし私も0.5言語になってしまわないですか?

 

あなたはもう大人ですから大丈夫です。

 

宇宙船に行き、もっとテレパシーで会話をすることになった。

 

宇宙船の中は、部屋を増やす工事が進んでいた。

 

窓の女は会議室で林の女と再会した。まずは彼女と行動を共にする中で克服方法を探すことになった。

宇宙船の中の会議室で、窓の女と林の女の人会話がはじまった。

 

この前、お会いしましたね。

 

道端。

 

え?ああ、そうね、林の中の道端で、会いしましたね。

 

おっと、このカモシダサーという冠を被るのを忘れていた。

 

ハム。

 

ああ。

 

おすすめ。

 

そっか。

 

しばしの会話の後、窓の女は帰る時間になった。

 

家まで送ります。とうでしたか?

 

手作りの生ハムのサンドイッチが美味しいオススメのお店を0.5言語で教えてくれました。

 

そのお店、あなたが働いていたお店ですね。

 

先に言わないでください、私に言わせてくださいよ。でもテレパシーで伝わったから、私が言ったのと同じか。

 

翌日、窓の女は林の女の仕事に同行した。0.5言語は思った以上に癖が抜けないものだとわかった。

窓の女はカモシダサーについて考察していた。

 

1、ほとんど透明な機械で、冠の形をしている。

 

2、草の香りがする、あの林のように。

 

3、空飛ぶ男や林の女のテレパシーを聞くことができるようになる。

 

おーい、ごめんね、聞きたいことがあります。

 

カモシダサーのことなんだけど、もしかして余分な機能がついてますか?

 

テレパシー以外では、体験を記録する機能がついています。

 

それかあ。

 

どうかされましたか。

 

今日ね、外すの忘れて一日中過ごしてたんです。

 

確かにあれは、羽のように軽く、それでいて簡単に外れませんからね。

 

そしたらさっき、カモシダサーを使いはじめてから、これまでのことを、ふたたび体験したんです。

 

それはおかしいですね、そんなことは起こらないはずです。

 

この星の人が使うと、そうなるのかもしれませんね。

 

問題ありそうですね。幸い、まだ、あなたしか使っていません。他の方にはこの仕事を断られてしまいましたから。

 

えっ。

 

断った人たちは騙されることを恐れたようです。

 

そっか。

 

窓の女の想いが、空飛ぶ男に伝わった。人は他人を騙さない。人生という神話から逃げるために、自分を騙す道の先輩についてゆき、いずれ他人を同じように巻き込む。それが他人を騙す形になる。

 

カモシダサーについてのまとめ。ほぼ透明の機械で、冠の形をしている。草の香りがする。被るとテレパシーが聞こえるようになる。身につけた者の体験を記録する。この星の者が身につけると、記録された体験をふたたび体験することがある。

窓の女と空飛ぶ男は恋仲になった。

 

お互い共にいたいと感じるようになり結婚した。

 

窓の女は林の女と機械のゴミ拾いを続けた。

 

だがある日、窓の女が行方不明になった。

 

カモシダサーが林に落ちていた。

 

消した。

 

消えたのではなくて、消したのですか?

 

自分で。

 

妻は自分を自分で消したということか。そんなことが可能なのか。それにしても、言いたいことがよくわからない。カモシダサーの記憶を確かめれば何かわかるかもしれない。

 

しかしカモシダサーは、この星の者が身につけて記録したことは、本人しか記憶を読み出せないことがわかった。

 

男は妻を探すため、あらゆる力を使った。

 

仲間の助けで空飛ぶ男は冷静になり、仲間たちと協力して窓の女を探すことにした。月日が流れても男は決して彼女を忘れることはなかった。

とある国で、不思議な板が見つかった。その板の上に乗ったものは、同じものが一つ増える。

 

どんなものでも同じ。

 

しかし大きな違いが一つだけ。増えたものは、すこし時間が経ったものだった。 例えば果物なら、その葉が大きくなり、果実も少し痛んでいた。

 

これを使って兵士を増やすことが試みられた。

 

祖父からゆずりうけた思い出のある椅子は、二つと無い。その椅子を誰にも取られたくない。二人に増えた兵士の男は、もう一人の自分を消したくなった。

 

だが、もう一人の兵士の男は、それどころではなかった。彼は恐ろしい未来を見たからだ。増えた方は、じつは増えたのではなくて、未来から呼び寄せられたのだった。

 

彼が未来の板の上で目覚めたとき、ある女性が待ち構えていた。この国がこの板を乱用したことで、大地が歪み、震えて割れて、国が滅びたと教えてくれた。そして、過去に戻ったらこの板を破壊してくれと言った。

 

そう言い終えた彼女は、この板を誰の手にもゆずるまいと、この国の兵士たちと戦いはじめた。

 

過去に戻った彼は、すぐに板を破壊した。反逆者とされ、国を追放された。あの椅子への悲しい執着を克服できた。なぜなら、滅びた世界を見たとき、大切なのは、あの椅子とその思い出を与えてくれた愛そのものへの感謝だと、気がつかされたから。

 

そのことに気づく未来が、もう一人の自分にも来るようにと、祈った。

 

未来で出会った女性は、空から落ちてきたアレに乗ってきたと言っていた。国を追放された男は彼女に会うため宇宙船を目指した。

兵士だった男が宇宙船を訪れ、女性と再開した。コミュニケーションのため、ひとまず彼にカモシダサーが貸し出された。

 

すると彼には、窓の女の記憶の読み取りができた。カモシダサーをつけた瞬間、彼はそのことを証明するため、空を飛ぶ許可を求めた。そして上手に飛んだ。訓練しないと困難なはずだが、窓の女の訓練を思い出したらしい。

 

あなたと彼女の記憶を読み出せたのは、彼女と特別な共通点があったからだと、わかりました。

 

それは二人とも、せまい組織の中にいて、大切なことを見失っていたが、後になって取り戻したことです。

 

彼女を探す手がかりがつかめました。ありがとうございます。

 

記憶によると、窓の女は、好奇心から光の風の吹き出し口に手を突っ込んで、吸い込まれた。

 

そして、部品や材料を仮置きする、時間が止まった空間に、囚われていた。

 

空飛ぶ男は、窓の女をその空間から引き戻すと、二人で家に帰っていった。

兵士だった男は、林の女と再会し、0.5言語の克服を協力するうち、恋仲になった。

兵士だった男は、もう一人の自分を思い出した。そして再会し、カモシダサーをつけさせた。お互いの体験を共有した。

 

未来から来たほうは消えてしまった。きっと未来に帰ったに違いない。

 

ただいま。おかえりなさい。

 

今日で全ての機械のゴミ集めが完了しました。あの板を回収した時点で、完了したのも同じでしたが。

 

やりきりましたね。明日から少しゆっくり休んで、旅行でも行きましょうよ。

 

プラネタリウムは、訪れる人たちに、やさしく音声を流した。すべて感謝し、手放して、しかし忘れず…。

 

あの星への旅行計画が立ち上がった。宇宙船が作られ始めた。最初の旅行者に、窓の女、空飛ぶ男、林の女、兵士だった男、そしてその他の者たちが選ばれた。